ツェッペリン広場

登場手塚作品:『アドルフに告ぐ』(1983~1985)

『アドルフに告ぐ』第2章で、峠草平は弟の恋人のリンダ・ウェーバーとニュルンベルクのツェッペリン広場で行われたナチス党大会を見に行く。そこでヒットラーの演説に熱狂する人々に違和感を抱く。

『アドルフに告ぐ』第2章  左ページ上のコマに書かれているドイツ語は、ヨハン・シュトラウス2世のオペレッタ「こうもり」の一節。Die Majestät wird anerkannt, Anerkannt rings im Land DirhuldigenNationen  ©手塚プロダクション

第一次世界大戦の敗戦国・ドイツは、イギリスやフランスなどの戦勝国から多額の賠償金を課せられた。さらに1929年の世界大恐慌の煽りを受け、町には失業者が溢れた。この社会不安を背景に、ヒットラー率いるナチ党国家社会主義ドイツ労働者党)が大きな力を伸ばした。1932年、ナチ党は第一党になり、翌年ヒットラーはドイツの首相に就任した。

ヒットラーは「ドイツ人のためのドイツ」を唱え、共産主義者やユダヤ人の排斥を訴えた。飛行機で全国を遊説するなどの演出や、大仰なジェスチャーを交えた演説は、巧みにドイツ国民の心を掴んでいった。

ナチ党の党大会は、1933年の政権獲得後は、毎年9月にニュルンベルクのツェッペリン広場で行われた。国防軍、親衛隊の他、ヒットラー・ユーゲントから選抜された少年達も参列した。1934年の第6回党大会の様子を撮影したプロパガンダ映画「意思の勝利」(監督:レニ・リーフェンシュタール)は全国で上映され、記録的な動員を達成した。