元町

登場手塚作品:『アドルフに告ぐ』(1983~1985)

「ちょうどその頃、神戸の三宮では峠とわかれた小城先生が駅前の喫茶店でパン屋のアドルフ・カミルとあっていた」

諏訪山の俯瞰風景から元町の大丸神戸店を描いたシーンがなぜ[三宮]なのか。このシーンのもとになったのは『日本地理体系 第7巻近畿篇』(改造社 昭和4年)掲載の「三宮附近」と題された航空写真である。解説には「白い大きな建物は大丸呉服店であって三越と並ぶデパートメント」と書かれており、奥には鈴蘭灯が並ぶ元町商店街が映っている。実は本書が発行された時点では、元町界隈を[三宮]と称していた。

 

『日本地理体系 7巻 近畿篇』より「三宮附近」。タイトルから当時は元町界隈を三宮と称していたことが判る。

絵葉書「元町に近接して街頭に聳ゆる大丸」

現在の大丸神戸店

三宮神社

 

省線三ノ宮駅(前国鉄、現在のJR)は、現在の元町駅の位置にあり、大丸の北側[三宮町]の[三宮神社]が地名の歴史を物語っている。昭和6年、高架化により[三ノ宮駅]が現在の位置に移転したものの、元町も経済の中心地であったことから地元住民の請願と出資により、昭和9年[元町駅]が誕生した『アドルフに告ぐ』でも元町の高架が随所に登場する。

弧状市街 『日本地理体系 第7巻近畿篇』(改造社・昭和4年)掲載の神戸元町界隈の空撮写真。左側を縦に帯状に走っているのが国鉄の高架。吹き出しは、現在の元町の主なスポット。