新港突堤

登場手塚作品:『アドルフに告ぐ』(1983~1985)

上は現在の新港第三突堤、神戸フェリーターミナルの風景である。この静かな港は『アドルフに告ぐ』の時代、外国船舶が航行する活気溢れる港であった。

昭和15年11月、エリザ・ゲルトハイマーは、家族と別れ、単身ドイツから神戸へ亡命する。アドルフ・カミルがエリザを迎えにいったのが神戸港である。

神戸港は1868年(慶応4年、明治元年)開港した。明治期には外国人居留地が造られ、神戸は西洋文化の入り口として発展していった。大正11( 1922)年、新港第一~第四突堤が竣工し、大型船舶が着岸できるように整備されていく。

『アドルフに告ぐ』第20章 カミルがエリザを迎えに行った神戸港で描かれた船舶は下写真の『日本地理体系7巻 近畿篇』(改造社 昭和4年)を元に描かれている。 ©手塚プロダクション

『日本地理体系7巻 近畿篇』(改造社 昭和4年)より

 

絵葉書「神戸市全図」

この地図は、国鉄の高架が整備される前の鉄道省東海道本線三ノ宮駅が、現在の元町駅の位置にあること、阪神電車の終点が[そごう神戸店]の場所でなく旧滝道停留所で、線路も現JR線からフラワーロードを下ってくるルートであること等から、『アドルフに告ぐ』の時代より約10年前の昭和6年以前に描かれたものと推定できる。左下は、現在の川崎重工業株式会社の前身、川崎造船所である。新港地区の特徴的な4本の突堤は東から順に第一突堤~第四突堤となっていたが、第五、第六突堤が整備された昭和14年頃、西からの番号順に名称変更された。新港地区の突堤には、灘駅の少し東で東海道本線から臨港部へ分岐した貨物線の支線が引き込まれ、豪華客船が入港した際には、突堤から京都までの直通貸切列車が運行されていたという。

絵葉書「埠頭見送の景(神戸)」

神戸フェリーターミナルからの夕景