諏訪山公園

登場手塚作品:『アドルフに告ぐ』(1983~1985)

「この港のように青い海に暖かい南の風が流れてたくさんの鷗が見える丘の上にあたしの家があるの、ドイツ人は一人も居ずユタヤ人だけの大学に通ってユダヤの歴史を習うの。そこは…きっとあたし達の祖先の土地…パレスチナだわ。そこをあたし達ヘブライ共和国と名づけましょうよ。」

「いや…イスラエル共和国の方がピッタリやろ。おれたちイスラエルびとの子孫やもんな。」

『アドルフに告ぐ』第20章で、エリザとアドルフ・カミルは、神戸の街を一望できる諏訪山公園で、ユダヤ人の国・イスラエルへの思いを二人で語り合う。

『アドルフに告ぐ』第20章 ©手塚プロダクション

諏訪山公園一帯は、かつては諏訪山神社を中心として温泉や動物園などがあり、多くの著名人が訪れるなど、神戸市民の行楽地となっていた。明治7(1874)年には展望台でフランスの観測隊が金星観測を行ったことから同地は[金星台]と呼ばれた。標高90メートルの金星台から標高160メートルの諏訪山展望台を繋ぐ90メートルの螺旋橋が、1971年に完成した[ビーナスブリッジ]で、橋を登り切ったヴィーナステラスには[愛の鍵モニュメント]がある。

第20章で二人が語り合っている場所は金星台だが、現在は樹木が覆い繁っており、神戸の街を見渡すには展望台まで登る必要がある。

また、第16章のカミルと小城典子が三宮で会うまでのナレーションは諏訪山からの俯瞰風景で始まり、川崎造船所やエリザが船で到着した新港突堤なども描かれている。

絵葉書「諏訪山より望みたる神戸市」

絵葉書「諏訪山より見たる神戸港」