登場手塚作品:『アドルフに告ぐ』(1983~1985)
『アドルフに告ぐ』の主人公の一人、アドルフ・カウフマン。ドイツ人の父と日本人の母を持つ彼の自宅は、北野町にあったと設定されている。明治期にドイツ人貿易商ゴットフリート・トーマスの自邸として建てられた[風見鶏の館]がモデルのひとつである。煉瓦の外壁に尖塔に風見鶏がのる外観が特徴で、階段や応接間など、洋館の雰囲気が作中に活かされている。
カウフマン邸のモデルとなった洋館は、[風見鶏の館][萌黄の館][シュウエケ邸]の三つで、これらの特徴を組み合わせて一つの館として描かれている。手塚治虫の元アシスタントの伴俊男さんの話によると、背景画はすべて資料写真を見て描いたわけではなく、一枚詳しいモデルとなるゲラ(前の印刷物)があれば、スタッフが手分けしてそれをもとに描いたそうである。カウフマン邸の設定資料は、チーフアシスタントの福元一義さんが描いていたという。