大阪の繁華街・道頓堀。その難波よりの一角に松竹座がある。手塚治虫は、学徒動員を一日サボり、松竹座へ昭和20( 1945)年4月12日、漫画映画「桃太郎 海の神兵」を見に行った。「桃太郎 海の神兵」は“日本アニメの父”と呼ばれた政岡憲三とその弟子の瀬尾光世との合作である。内容的には戦意高揚を目的としたものだったが、アニメーションと しては非常にクォリティの高い作品だった。そのアニメを見て手塚治虫は非常に感動して涙した。この漫画映画を見たことが、のちに自身でアニメーションを作ろうと決意するきっかけとなったという。松竹座は「道頓堀の凱旋門」と呼ばれた正面玄関 を今もなお残している。